情動は扇動し、感染し、伝播する!
情動論の批評的可能性を探り、
文学/文化が孕む「情動の力」を掘り起こす——
オスカー・ワイルド、谷崎潤一郎、セルゲイ・トレチャコフ、リチャード・ライト、アドリエンヌ・ケネディ、コリンズ『白衣の女』、メルヴィル「書記バートルビー」、アトウッド『誓願』、リンチ『ロスト・ハイウェイ』、スポーツと情動と身体性……
序章◉情動論の可能性(武田悠一・武田美保子)
1 はじめに/2 情動論的転回/3 スピノザの情動論/4 情動の脳科学/5 情動の映画論/6 情動の政治学/7 情動に触れる批評
第1章◉情動と芸術生成
—オスカー・ワイルドと谷崎潤一郎を中心とした比較芸術研究—(日髙真帆)
1 はじめに/2 情動の多様な定義/3 ドリアン・グレイの二枚の肖像/4 サロメの踊りと情動の交錯/5 「刺青」に見る絵画と身体表現/6 舞台芸術・映像芸術と情動/7 おわりに
第2章◉情動的体験としての映画
—『ロスト・ハイウェイ』における物語の歪曲、クロースアップ、音楽性—(武田悠一)
1 映画は情動的な体験である/2 認知主義理論の真価/3 メビウスの帯/4 精神分析の根幹/5 心因性/6 多重人格/7 カント的崇高と映画体験/8 顔とクロースアップ/10 映画の手触り
第3章◉触発し/触発される身体(梶原克教)
1 スポーツ/情動/出来事/2 身体/言説/情動/3 身体の従属性/身体の可塑性/4 身体の可塑性/状況の可鍛性
第4章◉苦しみのトリアージ
—トレチャコフとライト作品の情動表象から考える—(亀田真澄)
1 はじめに——苦しみの重さと軽さ/2 社会的同情から共感の宣伝へ/3 感情共同体のプロパガンダ/4 トレチャコフ『デン・シーフア』における「感情の社会的重さ」/5 ライト『ネイティヴ・サン』における「恥のしるし」/6 結び
第5章◉恥という情動
—『白衣の女』における触発の構図—(武田美保子)
1 はじめに/2 感染する手/3 パラノイア的推察による女性化と恥/4 階級詐称と情動/5 神経過敏な人物たちと「共感」の哲学/6 クィアネスと肥満体の変容/7 おわりに
第6章◉触発としての「受動的抵抗」
—「書記バートルビー」をめぐって—(武田悠一)
1 はじめに/2 嫌悪と軽蔑/3 カント的崇高/4 ニーチェ的ルサンチマン/5 「あらゆる否定の彼方にある否定主義」/6 「絶対的潜勢力」/7 労働拒否/8 分析(へ)の抵抗/9 革命の原理/10 資本主義の欲望/11 労働と所有
第7章◉アドリエンヌ・ケネディの
一幕劇における記憶、情動(鵜殿えりか)
1 はじめに/2 アドリエンヌ・ケネディについて/3 ケネディ劇の評価/4 情動、記憶/5 『黒人のファニーハウス』/6 『梟は答える』/7 『映画スターは黒白で演じよ』/8 おわりに
第8章◉『誓願』における〈怒り〉の倫理
—歴史を書くということ—(武田美保子)
1 はじめに/2 ギレアデ国成立の背景/3 トラウマと情動/4 伝播する〈怒り〉/5 〈怒り〉の倫理性/6 女性たちの絆/7 歴史を書く行為/8 おわりに
終章◉情動論の批評的展開(武田悠一・武田美保子)
1 はじめに/2 心と体/3 問題となる身体/4 共感をめぐって/5 情動のジェンダー化/6 構築主義的情動論/7 感情労働/8 情動の倫理性と政治性
あとがき
索引
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