SF評論に何ができるか?
20世紀中葉、安部公房はSFを「この名づけがたきもの」と呼んだ。
21世紀現在、世界はSF化してしまった。
荒巻義雄の言う「SFする思考」は新しい日常の随所に浸透している。
ならばSF評論は、いかにSF的現在を、そして現在 SFを語りうるか?
本書は古典SFから現在SFにおよぶ多くのテクストに対峙しつつ、ベテランSF評論家たちの来るべきSFのヴィジョンを透視する力作論考 12本を結集。
論及されるのはメアリ・シェリーからヴェルヌ、ウェルズ、アシモフ、クラーク、ハインライン、レム、バラード、ゾリーン、ディック、ヒューガート、クライトン、ギブスン、シャイナー、イーガン、そして我が国の沼正三、光瀬龍、小松左京、星新一、筒井康隆、石川喬司、豊田有恒、平井和正、山野浩一、三枝和子、高野史緒、伊藤計劃、倉田タカシ、藤本タツキに至るまで。
いま「S Fを語ること」の楽しさが、ここにある!
『SF評論入門』緒言(巽 孝之)
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◉序説(巽 孝之)
SFをいかに語るか—SF評論入門のために
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第一部 古典SFをどう語るか
序文(巽 孝之)
◉第一章(忍澤 勉)
『ソラリス』に交差する二人の視線—レムの「神学」とタルコフスキーの信仰
◉第二章(藤元 登四郎)
ディック『高い城の男』と易経
第二部 SF作家をどう語るか
序文(巽 孝之)
◉第三章(石和 義之)
アイザック・アシモフの想像力—帝国主義の時代に生まれて
◉第四章(宮野 由梨香)
光瀬龍『百億の昼、千億の夜』の彼方へ
第三部 SFジャンルをどう語るか
序文(巽 孝之)
◉第五章(礒部 剛喜)
国民の創世再び—第四次世界大戦下のハインライン『宇宙の戦士』
◉第六章(岡和田 晃)
「未来学」批判としての「内宇宙」
—山野浩一による『日本沈没』批判からフェミニスト・ディストピアまで
◉第七章(横道 仁志)
バリー・ヒューガート『鳥姫伝』論—断絶に架かる一本の橋
第四部 SFとテクノロジーをどう語るか
序文(巽 孝之)
◉第八章(ドゥニ・タヤンディエー)
荒巻義雄「柔らかい時計」—シュルレアリスムとナノテクノロジーのイマジネーション
◉第九章(海老原 豊)
生成AIは作者の夢を見るか?—グレッグ・イーガン『ゼンデキ』の作者機能
◉第十章(鼎 元亨)
ナガサキ生まれのミュータント—ペリー・ローダン・シリーズを中心に
第五部 現在SFをどう語るか
序文(巽 孝之)
◉第十一章(渡邊 利道)
エキセントリックな火星—倉田タカシ試論
◉第十二章(関 竜司)
藤本タツキ『チェンソーマン』とZ世代—再帰的モダニズムと〈器官なき身体〉の肖像
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◉終章(荒巻 義雄)
六〇年代からの証言—あとがきに代えて
索引
英文イントロダクション Takayuki Tatsumi
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