• 小鳥遊書房

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Details of the book書籍詳細

新刊
ディストピアSF論
人新世のユートピアを求めて
  • ユートピアがディストピアに変容するトポス(場所)を古典的な作品から現代までSFに探る。
    著者・訳者
    著者:海老原 豊プロフィール
    ジャンル SF 評論
    出版年月日 2024年6月28日
    ISBN 978-4-86780-050-8
    判型 四六判並製
    ページ数 352
    定価 本体2,800円+税
    在庫 在庫有り

    誰かのユートピアは、
    誰かのディストピアである。

    ユートピアがディストピアに変容するトポス(場所)を古典的な作品から現代までSFに探る。
    「監視」「人工知能」「人口調整」「例外状態」「災害」「気候変動」「労働解放」などを鍵語に
    ユートピアとディストピアとの境界線をたどりながら、人新世のユートピアを想像/創造しよう。

    はじめに◉欲望されるディストピア

    第1章◉古典的ディストピア—三部作から二一世紀ディストピアへ
    1  『一九八四年』に描かれていないもの
     11 惹かれる理由
     12 客体としての過去
     13 非人間的手段
     14 オーウェルの(不)可能性
    2   『すばらしい新世界』のすばらしいアポリア
     21 「すばらしい」人口・階級管理
     22 「すばらしい」感情の排除
     23 「すばらしい」ソーマ
     24 標準からの偏差 バーナード・マルクス
     25 内部化される外部 高貴な野人・ジョン
     26 システムのアップデート 世界統制官ムスタファ・モンド
     27 四層ヒエラルキー
    3  『華氏451度』のメディア(媒体)
     31 本(知識)を管理する者
     32 媒体としての本自体
     33 本の読み手(インテリvs大衆?)
    4  二一世紀ディストピアへ
     41 《①場所—境界・統治・法・アーキテクチャ》
     42 《②市民—階級・道徳・身体》
     43 《③労働—生産・消費》
     44 《④メディア—リテラシー・コミュニケーション》
     45 《⑤環境—災害・気候変動》

    第2章◉監視ディストピア—スマート化された身体のアイデンティティ
    1  風景から環境へ、溶け込むカメラ
    2  ヒューリスティックと合理性のあいだ—映画『AI崩壊』
     21 地に足のついたAI像
     22 なぜ浩介は妻を助けなかったのか
     23 なぜAIのぞみは修正プログラムをカメラで読むのか
    3  不可視化する/される階級的身体—林譲治『不可視の網』
     31 監視カメラ下での不可能犯罪
     32 不可視化する/される階級的身体
    4  遠のく「透明化」—デイヴ・エガーズ『ザ・サークル』
     41 サークルのサービス
     42 透明化、そして完全化へ
     43 メイの「裂け目」と欲望の行方
     44 通時的/共時的な因果関係
    5  分人dividualsと散映divisuals—エアリプと平野啓一郎『ドーン』
     51 分人と散映
     52 散映と透明化
     53 分人のアイデンティティ
     54 私たちはどうしてエアリプをしてしまうのか
    6  監視ディストピア 結論

    第3章◉人口調整ディストピアと例外社会
    1 少子高齢化時代の「炎上」案件
    2 人減らしディストピアの原型—星新一「生活維持省」
    3 「かわりましょかわりましょ」—藤子・F ・不二雄「定年退食」
    4 老後の人権がありません!—垣谷美雨『七十歳死亡法案、可決』
    5 決断できない国民・決断できる政治家 —山田宗樹『百年法』
    6 確率化された暴力としての国家繁栄=福祉—映画『イキガミ』
    7 静謐な「自決」を止める—映画『PLAN75』
    8 結論

    第4章◉災害ディストピアとニーズの分配
    1 人新世と気候正義
    2 ソルニットの災害ユートピア
    3 新しい社会を設計する—ジョン・ウィンダム『トリフィド時代』
    4 猿の惑星〈新三部作〉
     41 『猿の惑星:創世記』
     42 『猿の惑星:新世紀』
     43 『猿の惑星:聖戦記』
     44 ユートピア/ディストピアの置換
    5 石油の枯渇した社会で—パオロ・バチガルピ『ねじまき少女』
    6 『日本沈没—希望のひと』
     61 科学的態度
     62 パターナリズムと報道の自由
     63 個別的な国民と普遍的な人権
     64 『希望のひと』が「沈めた」もの
     65 移民に対する想像力
     66 韓国・朝鮮半島
     67 人々の日常生活
    7 災害ディストピア 結論

    補論 小松左京『日本沈没』と日本人の成熟
     補1 「おとな民族」と地球の進化
     補2 草食系男子の成熟
     補3 アニメ『日本沈没2020』

    第5章◉労働解放ディストピアの製造コスト
    1 生産と再生産のトレードオフ—カレル・チャペック『ロボット RUR』
    2 もっとも人間らしいのは誰だ—H・G・ウェルズ『タイムマシン』
     21 どちらに感情移入するのか
     22 どちらか人間らしいか
     23 タイムトラヴェラーは人間らしいか
    3 人間から労働が疎外されたユートピア—映画『ウォーリー』
     31 あらすじ
     32 人間の労働をロボットに置き換えることは可能か?
     33 労働する手足
     35 道具の目的性と逸脱
    4 想像力の放逐—小川哲『ユートロニカのこちら側』
    5 無所有主義とアナキズム—アーシュラ・ル・グィン『所有せざる人々』
     51 オドー主義の非中央集権性
     52 関係性の所有(=所有的関係)
     53 創造性を所有できるか
     54 知識の偏在は解消できるのか
    6 労働解放ディストピア 結論

    おわりに◉支配と抵抗の脱構築
    1 プラトンのユートピア
    2 《私たち》から《あいつら》をパージする
    3 仮想現実のユートピア/ディストピア性
    4 ハッピークラシーの生前統治
    5 希望と絶望のタペストリー


    参考文献
    あとがき
    索引

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