「心臓」にして「心」でもある
「ハート」とはいったい何のシンボルなのか?
ヨーロッパ文化を通して哲学・医学・宗教・芸術・文学の歴史が織りなす
変幻自在なハートの謎に多彩な図像とともに迫る。
◉はじめに(須藤温子)
第 一 部
ハートの文化史——哲学・医学・美術・文学(須藤 温子)
マンモスの心臓
古代〜中世
古代エジプトで描かれた最古のハート——耳のついたハート
ハートの語源
世界最古のハート型容器—神に生け贄の心臓を捧げるために
古代エジプトの心臓—心臓の計量
哲学と宗教における心臓—心臓か脳か
ミクロコスモスとしての心臓
善悪の判断と良心
脳と心臓—外科手術
医学(古代〜中世)
心臓を医学的にとらえる 古代エジプト、古代ローマ帝国
アリストテレス
ガレノス
失われた医学の知識——アラビア医学を経てふたたびヨーロッパへ
★心臓の部屋とかたち(1)——古代サレルノ医学校とコンスタンチヌス・アフリカヌス
施療施設としてのベネディクト修道院
★心臓の部屋とかたち(2)松かさ型やヘーゼルナッツ型の心臓—中世
解剖により可視化されたリアリティ
心臓の中の謎めいた(黒)点—血液とプネウマの循環
★心臓の部屋とかたち(3)解剖学における心臓
——ヨハネス・パイリクとレオナルド・ダ・ヴィンチ
レオナルド・ダ・ヴィンチ
解剖図解における心臓
心臓—肺
気管—心臓あるいは気管—心臓—肺
気管—肺—心臓—肝臓
芸術(美術・文学)(中世〜)
★心臓の部屋とかたち(4)——くぼみのある心臓の出現(一四世紀)
芸術(美術・文学)(中世〜)
ブルクハルト・フォン・ヴォルムス(九六五頃〜一〇二五年)
『梨物語』—差し出される心臓
アモル、ヴィーナス、ミンネ夫人—愛の神々と世俗の愛
傷ついた心臓
『マネッセ写本』(一二八〇頃〜一三三〇年頃)
『キリストと恋する魂』(一五〇〇年頃)
聖女カタリナ——心臓の交換
《ヴィーナスと恋人》と《愛の魔法》
《ヴィーナスと恋人》と〈五つの聖痕とキリスト〉(一五世紀)
心臓を食べるなかれ(cor ne edito)—嫉妬と慈愛
感情のありかとしての心臓—ハートは「慈悲」を表すものへ
「清貧」と「貞節」のアレゴリーに
描かれた心臓
慈愛の擬人像
三分割埋葬——心臓の埋葬
ハプスブルク家の心臓
心身分離の観念とトルバドゥール
心臓物語——食べられた心臓
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【コラム】ハートの伝説いろいろ(須藤 温子)
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第 二 部
ハートの諸相
◉中世フランスの文学テーマ「愛の嘆き」とハートの形象化
(徳井 淑子)
◉ハートのエンブレム—ペトラルカからヘフテンへ
(伊藤 博明)
◉ウィザーの燃える心臓と祭壇—一七世紀イギリスのエンブレムの事例
(植月 惠一郎)
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インテルメッツォ
◉歌と「クオーレ」 (斉田 正子)
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◉人魚の魂・男の心臓—『ウンディーネ』、『人魚姫』、『漁師とその魂』
(須藤 温子)
◉聖心イメージとハプスブルクの聖人たち—金羊毛騎士団を手がかりに
(蜷川 順子)
◉小道具、大道具、そして役者としてのハート—西洋一五世紀後半〜一七世紀前半の視覚上の作例を中心に
(木村 三郎)
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【コラム】《心臓に毛の生えた》発表—若桑みどりさんの思い出
(木村 三郎)
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◉あとがき (須藤 温子)
◉編集後記 (木村 三郎)
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