エリオットが作り出した『荒地』という「廃墟」の全貌をアメリカの同時代紙によって「発掘」する!
著者・訳者 |
著者:荒木 正純プロフィール
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ジャンル | 外国文学/批評 |
出版年月日 | 2022年10月31日 |
ISBN | 978-4-909812-92-6 |
判型 | A5判上製 |
ページ数 | 1150 |
定価 | 本体9,500円+税 |
在庫 | 在庫有り |
『荒地』の場合、「読むこと」は
「発掘すること」に他ならない!
同時代のアメリカの新聞紙面から
「トロイ」「ジプシー」「チェス」「インド」などの言説を探りあて、
エリオットが『荒地』という「廃墟」を作り出し、
「批評家」、もしくは、読者が「シュリーマン」よろしく、
そのテクストを「発掘」し、「廃墟」の全貌を「復元」する。
まえがき—本書見取り図
第Ⅰ部 〈アーケオロジカル・イマジネーション〉の世紀と『荒地』
プレリュード
第一節 「トロイ・コンシャスネス」の時代
第二節 同時代アメリカ紙にみる、「トロイのヘレネ」・コンシャスネス
第三節 現代に再誕した「ヘレネ」①—マダム・ブラヴァツキー/マダム・イェール
第四節 現代に再生したトロイのヘレネ②—「フラッパー」、そして、ヴィヴィアン
第一章 〈トロイ〉はいずこ?
はじめに—問題の所在
余白①・アメリカ紙にみる「謎々」言説
余白②・アメリカ紙にみる「スフィンクス」言説
余白③・「影/塵」言説
余白④・「塵」のエピグラフの典拠について
—『サッダルマ・プンダリーカ』「第一三 安楽の住所」
余白⑤・「影/塵」と「ゴッシク」—ハーンの「塵」
余白⑥・『荒地』同時代の「ゴシック・ロマンス」言説
余白⑦・ガーバー著『中世の伝説』における「アーサー王物語集成」について
余白⑧・『荒地』に彷徨うテニスンの影
第一節 『荒地』のテキストを発掘し、〈トロイ〉を探る
余白⑨・「瓦礫」+「イノシシ」の例
余白⑩・「イノシシの頭」をめぐる同時代アメリカ紙の記事
余白⑪・「瓦礫に埋もれた」「インドのトロイ」の記事
余白⑫・「トロイのヘレネ」のアメリカ版
余白⑬・ブルータスと新トロイに言及した文学資料
余白⑭・「ニュー・トロイ」から「ロンドン」へ
余白⑮・「ロンドン・ストーン」—同時代アメリカ紙の記事
余白⑯・「むさぼり喰うロクスト」言説
余白⑰・「赤い岩」について
第二節 「考古学的発掘」言説の時代—「考古学は一九世紀に発展した」
第二章 シュリーマン博士からの手紙/〈非現実の都市〉が現実に
はじめに
第一節 「トロイ」を示唆する記号群—「死者の埋葬」をめぐって
第二節 トロイとスミルナの地理学
第三節 シュリーマン、逝く—同時代アメリカ紙によるシュリーマン賛辞
第四節 “my ruins”は「わたしの崩壊」か?—大戦争の「廃墟」報道
第五節 そして、もうひとつの「イリアス」物語—『トロイアの女たち』
第Ⅱ部 『荒地』と〈ジプシー〉言説の系譜
—「Ⅱ ア・ゲーム・オヴ・チェス」を掘る
プレリュード—表層テキストに不在の記号〈ジプシー〉
余白①・「Ⅱ チェス遊び」と『我らが共通の友』
余白②・アメリカ紙で報じられるローレンス・アルマ=タデマと「クレオパトラ」表象
余白③・アメリカ紙が告げる『アントニーとクレオパトラ』
余白④・『クォ・ヴァディス』について
余白⑤・「洗足式」言説
第三章 『荒地』と、パウンドの詩集『ラストラ』所収の詩三作
—「ザ・ジプシー」「ザ・ゲーム・オヴ・チェス」「メトロの駅で」
はじめに
第一節 パウンドの『』について
余白⑥・「ロンドン・ブリッジを群集が流れていった」をめぐって①
—パウンド作「メトロの駅で」と『荒地』
余白⑦・パウンド訳「能楽集」の「アッパリション」について
余白⑧・同時代紙の「アパリション」/「マテリアライゼーション」言説
余白⑨・パウンド=フェノロサ訳能「錦木」と『荒地』「Ⅰ 死者の埋葬」
余白⑩・シング作『西の国のプレーボーイ』への抗議運動(プレーボーイ暴動)
余白⑪・パウンドとイェイツが、ストーン・コテージでなしたこと—能ドラマ翻訳をめぐって
余白⑫・エドワード・カーペンターについて
余白⑬・「ロンドン・ブリッジを群集が流れていった」をめぐって②
—「ロンドン・ブリッジ」/「ロンドン塔」爆破事件と『荒地』
余白⑭・「クラーケンウェル監獄爆破事件」について
第二節 「スコーガン」言説と「ジプシー+女占い師」言説
余白⑮・つづき漫画「探偵ホークショー」
第三節 「ジプシー/ボヘミアン」言説と「モダニズム」
余白⑯・「センウセレト」関連の発掘
第四章 同時代アメリカ紙にみる「ジプシー」言説
第一節 十九世紀後半の言説
余白⑰・ジョージ・バロウとジプシー生活
第二節 「ジプシー」言説—リーランドとジプシー学
余白⑱・「ティンカー」をめぐる議論
余白⑲・「アイルランド」と「ジプシー」
第三節 「ジプシー」言説—その他もろもろ
第四節 「ジプシー」言説—芸術とジプシー
余白⑳・同時代の「エイプ」表象
—「アイルランド人」表象における「エイプ」と「黒人」、そして「進化」の深層の「発掘」
余白㉑・「ジプシー・パッション」の広告
余白㉒・ジプシー音楽について
余白㉓・ジプシーと誘拐
余白㉔・「つかの間のショー」について
第五節 「ジプシー」言説—ジプシーとアナーキズム
余白㉕・劇『デイヴィッド・ハラム』と劇『ドイツ人ジプシー』
余白㉖・欧米人の無意識を彷徨するジプシーたち
第六節 「ジプシー」言説—ジプシーの終焉
余白㉗・神聖ローマ帝国とジプシー迫害—「十八世紀のジプシー警戒標識」をめぐって
第Ⅲ部 〈国家〉と〈国語〉
第五章 〈チェス〉言説と〈アフロディーテ〉
はじめに——題「イン・ザ・ケージ」から「ア・ゲーム・オヴ・チェス」へ
第一節 「イン・ザ・ケージ」が連想させるもの
第二節 「ア・ゲーム・オヴ・チェス」の出所
—ミドルトン劇、シェイクスピア劇、そしてパウンド詩
余白①・『ザ・テンペスト』の〈チェス〉言説と『荒地』
第三節 同時代アメリカ紙の「チェス・ゲーム」言説
第四節 映画に登場する〈チェス〉—「アフロディーテ」と「クレオパトラ」言説
余白②・姉妹作『彼女の夫の友人』
第五節 「独立国家」の成立とその「国語」制定問題—「ノルウェー語」と「アイルランド語」の場合
余白③・「ラディノ語」をめぐって—同時代アメリカ紙より
第六章 「民衆フランス語」とは何か?
—ファクシミリー版『荒地』が提示する、国の再生と国語問題
はじめに
第一節 問題提起—『ファクシミリー版』での現場検証
1 「ヒズ・ヴァイル・フレンチ」
2 同時代アメリカ紙にみる「アボミナブル・フレンチ」
3 同時代アメリカ紙にみる「アボミナブル・ラングウィッジ」(abominable language)
4 同時代アメリカ紙にみる 「アボミナブル・グリーク」(abominable Greek)
5 同時代アメリカ紙にみる「アボミナブル」と「ジュー」「蛇」の連鎖
第二節 パウンドの関心の核をめぐって
—「プロヴァンス語/オック語」と「トルバドゥール」の「歌」
第三節 パウンドと「イマジズム」、そして同時代評
余白④・「ムーサイオス」について
余白⑤・コンプトン・マッケンジーの「シルヴィア・スカーレット」物
余白⑥・『ピーター・ウィフル』の「エディス・デイル」をめぐって
第四節 パウンドとプロヴァンス文学
余白⑦・「ラブレー」が揶揄った「リムーザン」方言
第五節 フランス語のたどった途—俗ラテン語からロマンス語へ、そしてオイル語/オック語へ
余白⑧・アメリカ紙の「ミストラル」言説
第六節 オイル語の支配言語化とオック語の没落史
第七節 「アイルランド」の「独立」—イングランド語/アイルランド語(ゲール語)
第八節 ロスミルナ(スマーナ)/イズミルと、ギリシャ語/トルコ語の攻防⑩
余白⑨・「人工言語」について
余白⑩・もうひとつの『イリアス』
—『列柱廊の絵画』に出土する「トロイ」と「スミルナ」第Ⅳ部 〈サンスクリット〉の考古学
余白⑪・『イリアス』の「エクフラシス」—「アキレスの盾」
余白⑫・『荒地』のエクフラシス
第Ⅳ部 〈サンスクリット〉の考古学
第七章 「ガンガ」へと至る旅
はじめに—「リエトゥヴァ」から「ガンガ」へ
余白①・「ヘンリー・サヴィジ・ランドー」の探索旅行について
余白②・アメリカ紙の英語「レイク・スターンバーグ」
第一節 ヨーロッパの知の地平に登場した「サンスクリット語」、その衝撃とその余波
余白③・もうひとつの「チェス」の詩
余白④・ジョーンズ/サンスクリット/ジプシー
第二節 インド(サンスクリット/パーリ語/ヒンディー/イングランド語)
余白⑤・『ララ・ルーク』とペナント『ヒンドスタンの眺め』をめぐって
第三節 聖なる川ガンジス
余白⑥・「死者」のもうひとつの浄化—「カーンプルの大虐殺」
第四節 ガンジス川の水源「ヒマラヤ山脈」へ
第五節 地図の空白を埋める—スヴェン・ヘディン博士のチベット探索旅行
第八章 疑惑の旅行記とその「インド」言説—「贋作」暴露の時代
はじめに—〈贋作〉の時代
第一節 シェイクスピア贋作誌—アイアランドとカリア
余白⑦・『ヴォーティガン』について
余白⑧・贋作の時代
第二節 マンデヴィル『旅行記』とその「インド」言説
余白⑨・『旅行記』の「ガンジス」と「インド」表象
余白⑩・贋作人魚フィーバー
第三節 『聖書』の空白を埋める旅行記—「聖イッサ言行録」
第四節 アメリカ同時代紙にみる、ノトヴィッチの受容・反駁経過
余白⑪・比較宗教学的な読み—ルナン『イエス言行録(伝/の生涯)』
余白⑫・同時代アメリカ紙における「サキャ=ムニ」
余白⑬・『聖アントワーヌの誘惑』と『荒地』—「禁欲主義」
余白⑭・二〇世紀初頭のティエポロ—同時代のアメリカ紙から
余白⑮・「ルナン主義」の影のもとに—「イエス言行録」と「イッサ言行録」
余白⑯・「ダッマロカ」について
第五節 ノトヴィッチの援軍?
第六節 「比較宗教学」言説—ノトヴィッチの典拠?
第七節 チベットのパーリ語文献
第八節 「人の息子」言説
余白⑰・「人の息子」論議史とその問題点
まとめ—「」シンドロームと、そこからの脱却
第九章 『荒地』形成過程と聖書正典・外典成立過程
はじめに—『荒地』と同時代の「剽窃」意識
第一節 同時代アメリカ紙にみる「剽窃」意識の変遷
第二節 聖書と偽物・贋作・虚構—「正典」と「外典」の創出
余白⑱・同時代アメリカ紙にみる「外典」言説
余白⑲・「シラの息子イエスの知恵」について
第三節 テキスト生成原理としての〈正典・外典〉化/〈伝説・伝承〉化/〈剽窃・贋作・虚構〉化
おわりに——謝辞と本書誕生「秘話」
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